au未来研究所

堀田裕介(写真左)/ Yusuke Hotta

料理開拓人 …料理で新しい出来事を開拓したり、人と人をつなげたりと食を通じた幅広い活動を行う。調理中の音をサンプリングしながら、曲と料理を一緒に作る「EATBEAT!」や、“食べ物で風景を作る”をコンセプトにしたケータリングとベーカリー&コーヒーショップ「foodscape!」を主宰。
EATBEAT!:http://eatbeat.jp/  foodscape!:http://food-scape.com/


山本雅也(写真右)/ Masaya Yamamoto

KitchHike共同代表 …2013年「世界中の食卓で料理を作る人と食べる人をつなぐプラットフォーム“KitchHike ” 」をリリース。現在、世界30ヶ国600以上のメニューを公開中。世界40ヶ国以上で現地の家を訪ねて食卓を囲むフィールドワークを重ねている。
KitchHike:https://kitchhike.com/  KitchHike Blog:http://blog.kitchhike.com/

食の未来。楽しむための食

前篇では、子どもに大切な「食」の体験、大人に大切な「食育」について語っていただきました。後篇ではお二人の体験から感じた日本と世界の「食」の違い、さらに「食の未来」についてもお話を伺っていきます。



—完全栄養食品やサプリメントのようなものが食事の代わりになっていくという未来は誰もが想像できる食の未来だと思うのですが、そうなった時、またそうならないために必要なことはどんなことだと思いますか?

堀田:今の時代、お茶の間でみんなでご飯を食べるというのはほとんどなくなりました。昔は帰りが遅くなったからといってコンビニで何かを買って…なんてできないから、同じ時間に食卓にいないと、ご飯を食べられなかったんですよね。でも今は、食べる時間も場所も、みんなバラバラになった。このまま、「食を楽しむ」という意識が衰えていくと、サプリメントのように「食」が簡素化してしまうんだろうなと思います。それ自体を否定するわけではないですが、例えば朝はサプリだけど夜はご飯食べよう、週末は人とご飯食べよう、という意識を持つことが大切だと思います。



山本:僕は結構賛成派です。栄養を摂るのはこのサプリ、と突き詰められたらそれはすごく存在意義がある。栄養はそれで摂って、じゃあ「食」をどうやって楽しもうか?と考える振り幅が広がっていくと思います。人間はそんなに単純なものではないので、サプリだけで毎日過ごそうと思う人はいないと思うんです。人との交流や、食をみんなで楽しむという価値に改めて気付けるきっかけになるんじゃないかなと思いますね。

食べ物による体の変化に、自分で気付く大切さ

—完全栄養食と、人との交流としての食。使い分けによる幅が広がるというのはポジティブな印象があります。食の楽しさを伝えるお二人の活動がさらに重要な意味を持っていきそうです。
お二人は、海外でも活動をされていますが、海外と日本で、「食」の捉え方に違いを感じたことはありますか?特に「子どもと食」という視点で、感じたことがあれば教えて下さい。

山本:僕は、キッチハイクを始めるときに、自分の足で50カ国をまわってご飯を食べ歩くということをしました。サンフランシスコに住んでいる若い夫婦と3歳の女の子の家に行ったとき、生活の仕方が丁寧で感動しました。子どももすごくのびのびと無邪気に過ごしていて、ある日みんなで海に行ったら、娘が砂を食べていたんですよ(笑)。でも、親は止めない。「砂、食べてるよ?」と言ったら、「すぐにこの砂がまずいって自分で気付くはずよ」って笑っているんです。日本だと、あれはダメ、これもダメ。これは食べてもいいって親が先にやってしまう。「食育」という言葉もそうだけど、なんとなく悪いものを排除するという考えになりがちだと思うんです。僕はファストフードとか、炭酸飲料とか、お菓子とか、食べてもいいと思います。食べて、次の日なんとなく体調よくないな、これは長期的に体に摂り入れるべきものではないかも、と自分で感じることが大切。マイナスの体験もどんどんするべきだと感じた体験でした。

堀田:体験をすることは本当に大切ですよね。プラスの体験も、マイナスの体験も。選択肢を広げることになりますから。僕は、ベトナムで日本の有機栽培を広げる活動を支援しています。ベトナムでは、太っている=お金持ち、健康、モテる!という間違った情報がいまだに蔓延していて、子どもにも甘いお菓子をひたすら与えているんです。環境によくて健康的なオーガニック食品という概念も全くない。オーガニック食品は、食べてすぐに健康になるような効果が現れるものではないですが、有機栽培を広める活動の中で、共感してくれるベトナム人は多くいます。そもそもの食べ物に対する意識が全く違うので、面白くもあるし、伝えごたえがある状況だなと思っています。


山本:もう一つ、僕がアルゼンチンに行った時なんですが、ランチの時間に巨大な肉塊のBBQが始まったんです。そして焼きあがるのに4時間かかると…。お腹空いてるんだけどな、と思いながらもみんなで乾杯して、ワインを飲みながら肉が焼きあがるのをワイワイ待ちました。案の定、酔っ払ってしまって肉の味が分からなかったのですが(笑)。こうやってメインディッシュができあがるまでの時間もコミュニケーションの時間として楽しんでいる国は多いですよね。日本のように「せーの」でご飯を食べないというか…。始まりも終わりも、なんとなくズルズルっとしています。

堀田:たしかに。日本のように「いただきます」「ごちそうさま」で、食事の始まりと終わりを区切るという習慣は外国にはあまりないですね。乾杯がスタートの合図であるとしても、終わりの合図ってないですね。

便利なものを作るという意識から外れてみる

—最後に、今回のハッカソンでは「子どもと食」ということでプロダクトを作成していくのですが、お二人は今の「食」分野においてどんなものがあるといいなと思われますか?ハッカソンに参加される方々へのヒントとなるご意見を、お願いします。

堀田:食に興味を持ってもらうという点でいうと、「育てる」という一連の流れを体験すると、そのものに対する考え方は変わると思います。都会に住んでいると、食材がどこから来ているのか知ることはあまりない。でも、世の中の食べ物は必ず誰かが作ってくれていて、放っておいて流通してくるものはほとんどありません。そういう意識を子どもの頃に持てるかどうかは、体験が左右すると思います。

山本:子どもに向けたものだったら、飽きなくて楽しいものがいいですね。あとは、頑張ったら頑張っただけご褒美があるようなものがいいな。例えば、野菜や何かを育てるとき、外部要因でうまく育たないことは必ずあると思うんですが、子どもには成功体験をたくさんしてほしいので、やったらやっただけいい結果がでるようなプロダクトがいいのかな、と思います。

堀田:戦後から、みんながいろいろなものを作ってきて、便利なものやプロセスを排除できるようなものが増えました。便利なほど裕福、と思ってきたけど、どうやらそうでもないかもしれない…と最近気づき始めていますよね。面倒くさい体験をするワークショップもすごく増えている。面倒くさいところにこそ、面白みや交流の元があると思う。便利なものを作るという意識を一度とり外してみると、もっと面白いアイディアがでると思います。何人かいないと動かせない道具は強制的にコミュニケーションを生むだろうし。作る側で使い道を決めすぎず、実際に使う人たちのアイディア次第で、使い道が何通りもあるようなものが、夢があると思いますよ。

「食を学ぶことは社会構造を学ぶこと」「食べ物を育てると生命の循環を感じる」という言葉にもあるように、「食」は人間にとって大切なことを教えてくれる大切な行為であり、ツール。世界平和を目指す山本さんが、「食」を通じて人をつなげる活動をされているのも納得できます。コミュニケーションを生む、ちょっと面倒だけど面白いプロダクトのアイディアを楽しみにしています。

インタビュー・前篇