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LIFE UPDATE

SCENE 5

大友水産

ビッグデータが
漁業をスマートに

大友水産とKDDIが描く未来

SPECIAL INTERVIEW

酒井清一郎
KDDI
大友康広
大友水産
GUEST
上田勝彦
ウエカツ水産

2020年、ついに5Gが私たちの元へやってきます。4Gから5Gへの進化は、私たちの生活にどんな変化をもたらすのでしょうか。au未来研究所では、5Gによって変わる未来の暮らしの“あれこれ”について、いろいろな分野から予想していきます。

第五回は、「漁業における5Gの可能性」について。大友水産の大友康広さんと、ウエカツ水産の上田勝彦さん、そしてKDDIの酒井清一郎が考えました。

“漁師の勘”を、目に見える数値に!

大友水産と、KDDIが一緒に実証実験を行うことになったきっかけを教えてください。

大友
大友
(大友水産)

東日本大震災後、KDDIさんが東松島市に出向で来られていて、何かできないかということでお話しをさせていただいたことが始まりでした。うちの漁港がまだ使えない状況で、隣の漁港に定置網を引き上げにいく作業をやっていたのですが、それだと、魚がいない時でも見に行かなくてはいけなかったんです。定置網の中に魚がいるかいないかわかるようにならないかな、という話が最初でしたね。

上田
上田
(ウエカツ水産)

昔から、古老たちが「お、この風が吹いたから、明日は入るぞ!」と言うよね。で、だいたいその通りになる。それを、センサーと装置で捕まえようという話だね。

海に設置したスマートブイで、海の中のあらゆる情報を一度に集めることができます。勘でしかわからなかったことが、データでわかるようになるかもしれません。

大友
大友
(大友水産)

まさにそうなんです。僕たちはよく“漁師の勘”という言葉を使うんですが、実はそれは勘ではなく、自分たちの中でデータを蓄積した経験則なんです。なので、とにかく海のデータを取り続けていれば、何かしらがわかると思うというお話をさせてもらいました。

漁の改善、安定化、効率化を実現するためのスマート漁業モデルだと思いますが、具体的にはどんな実験をされていますか?

大友
大友
(大友水産)

カメラに3Gをとか、魚群探知機でやってみようとか、そういうところから始まって、今はサケ網で実験しています。2、3年前から改良を重ねていて、現在は次の日にサケがどれくらい入っているかを予測しています。7割くらい当たるようになってきたかな、という感じですね。

酒井
酒井
(KDDI)

気温や気圧、水温、水圧、潮流、塩分濃度といったデータを収集するセンサーを搭載したスマートブイを使って、海の中の情報を正しく集めることで、次はこのくらいの魚が獲れそうだ、という予測ができるようになります。今後は、市場の需要のデータを集めて、明日はこれくらいの需要が出そうだという情報から「本当はこれくらい獲れるけど、実際にはこれだけ獲れたらいい」という判断ができるようになっていくといいですよね。

大友
大友
(大友水産)

今は、魚が何匹いるかわからない状態で、獲れるだけ獲るという感じですが、それを、必要な分だけ獲ることを繰り返すことで、サステナブルな漁業につながっていくんじゃないかと思っています。100匹いることがわかれば、50匹残すことで来年また100匹になる。そんな仕組みを作ることが理想ですね。

スマートブイを手にする大友康広さん(写真左)と、KDDI総合研究所の福嶋正義。まだ実証段階のスマート漁業プロジェクトに、たくさんの期待が込められます。

実際に海での実験を行なっている様子。海のデータから、次の日だいたいどれくらいのサケが網に入っているかを予測できるまでになったといいます。

上田
上田
(ウエカツ水産)

なるほど。あと、例えば大容量の魚群探知機の映像が、リアルタイムにスマホで見ることができる、というのはちょっと魅力的ですね。ただ、5Gでもなんでも「優秀な技術ができたから何かに利用できませんか?」っていうことが多いんだけど、やっぱり現場である海で何が必要とされているのかを聞き取って、それにマッチした技術を作ってほしいですね。

酒井
酒井
(KDDI)

まさに、5Gというのは、用意したから使ってねという形だけだとうまくいかないと思っています。今一緒にやらせていただきながら、実際にどういうところがニーズとして出てくるのか、そのニーズを聞きながら、それに合わせて新しい通信システムをどう作っていくか。そこが一番大事になってきます。

漁師と海のストーリーを、消費者へ

大友さんが実際に漁をされていて、こんなところにも5Gの可能性がありそうだな、と思うことはありますか?

大友
大友
(大友水産)

5Gを使ったアプリやシステムが発達したら、漁以外のムダな作業を減らしたり、簡素化できたりするのでは、と思っています。漁師の仕事に集中するために、それ以外のマニュアル化できる作業的な部分は手助けしてもらえるものがあるんじゃないかな……と。

上田
上田
(ウエカツ水産)

例えば、どういう作業の軽減に使えると思う?

大友
大友
(大友水産)

網を直す作業や、ロープを刺す作業とかどうでしょう。冬場は漁をやらないで、ビニールハウスの中で網を直す作業をずっとやるんです。その中のほんの少しのことでもいいからムダを排除することができれば、いつもは1時間かかっていた作業が30分で終わる。そうしたらその分漁にいく期間を長くできて、海のことに集中できますよね。漁獲をあげたり、魚価をあげたり、いろんな方向に体力や頭を使えるようになってくると思います。

「北西の風が吹いたらサケが入る、南の風が入ればイワシが入るなど、そういう漁師が経験で得た情報も共有しながら一緒に開発を進めています」と語る大友さん。

酒井
酒井
(KDDI)

仮に狭い意味での「5G」でできることは、あくまでも最後の、つなぎあわせのステップになります。真の5Gに向けては各々が自己流でやっている部分を、共通化できる部分は共通のプロセスにして、効率的に回していこうとする発想の中で、その標準化されたプロセスを、うまく通信システムを使って情報と連動させる。そういうところでお役に立てることがあるかもしれません。

「食育」という考え方も広がる中で、今子供たちが魚の形を知らないまま食べているという話もありますよね。

上田
上田
(ウエカツ水産)

日本は魚食文化だと言うんだけど、文化になる前に習慣があるんです。今、魚と日本人の距離が開いてきている理由は食べる回数が減っているから。じゃあ昔はどうやって身近に感じられていたかというと、魚屋がいたんですよ。魚屋は、魚を売るためにお客さんを育てながら商売をしてきた。相手の家庭に合わせて、魚や捌き方、食べ方まで提案していたんです。今はその魚屋が3年間で1万件も減っている状況の中で、国民の85%が魚をスーパーで買っている。そうなると、飲食店やスーパーに対して、育成プログラムみたいなものが必要になってくるんじゃないかなと思います。お客さんである大人の教育と、売る側への教育の両方が必要な時代なんです。

魚を買う時に必要な情報を、売る側が正しく伝えることも必要です。それは、魚屋さんでも、スーパーの売り場、飲食店でも同じこと。教育が必要と上田さんは話します。

いつ、どこの海で獲れた魚なのか。新鮮度やストーリーを伝えることで、その魚を身近に感じることができる。5Gがあれば、その価値を正しく伝えられるかもしれません。

酒井
酒井
(KDDI)

これが最高の魚であるという、その価値をわかってもらうような情報を消費者側に伝えることが大事かなと思うんです。みんながスマートフォンという端末を持っているので、ここの海で何分前に獲れた新鮮な魚であるという価値が、情報として流れてきたらどうですかね。例えば新鮮というのは、魚の価値としてすごく大切なことのひとつだと思います。そういった価値観を、発信できるといいですよね。

上田
上田
(ウエカツ水産)

あとは、ストーリーを見せる。これはひとつの有効なやり方でしょう。例えばマグロ漁がどうやって行われているか、それを見ることができる人はごく一部。それを、漁師が持ってる普通のスマートフォンできれいに撮ることができて、それを料理店や魚屋で流すことで、買う人食べる人が、獲るところから目の前の刺身に至るまでのライブに接することができるとか。でもそれだけでは全然足りなくて、もう少し、どこにどういう情報を伝えていったらいいのか議論が必要だと思っています。

魚の価値を正しく、美しい映像で伝える

情報を正しく魅力的に伝える時、画像だけでなく映像も重要になってきそうですね。

酒井
酒井
(KDDI)

出す情報は、大事な情報ほどよりきれいに出したいですよね。あとは、今は画像や映像だけですが、今後は触った感じとか、匂いとか、そういうものまで伝えられるような通信ができれば、もっとわかりやすくなるかもしれません。

上田
上田
(ウエカツ水産)

そんなことができるようになるんですか?

酒井
酒井
(KDDI)

5Gの時代には、通信システムの能力向上と容量の増加で、そういう感覚も伝えられるようになるかもしれないと言われています。動きを伝えるだけではなく、ものを持った時の感覚や温度感まで伝わります。

画像、映像の次は触覚や温度感を伝えられるようになるかもしれないと話す酒井の言葉に、大友さんと上田さんも「それはすごい!」と大興奮。

大友
大友
(大友水産)

何年くらいに実現するんですか?

酒井
酒井
(KDDI)

通信システムとしては対応できるものも20年くらいのスパンを見こして研究がされています。それに応じたデバイスをどう作っていくか、というのが今後の課題です。

上田
上田
(ウエカツ水産)

魚は、人が人に対して売るということが大切なところで、100年以上もずっとこの流通体制が続いてきたのは、海や魚という曖昧で不確かな要素を持っているものを、漁師が目利きして次の人や店へ渡し、その人も目利きして次のお客さんへ、というように多段階の目利きが一つの保険があったからなんです。その機能が失われつつある現状ですが、これからの情報化社会であれば、信頼関係さえあれば、技術がそれを代替する可能性もあるかもしれませんね。

水産業はまだまだ発展途上だという上田さん。人類にとって未知の世界である「海」ですが、漁師の力とデータの力を掛け合わせた先に、可能性が秘められていそうです。

大友
大友
(大友水産)

本当にそうですね。あと、水産業のためにITや技術開発をしてくださっている方たちは、ぜひ一緒に浜で生活してほしいんです。漁師たちはたくさんのノウハウ、知見、知識、技術を持っているので、暮らしていく中でこれだ!と気づくことがあると思います。ぜひ1週間、1ヶ月くらい住んでもらいたいですね(笑)。

酒井
酒井
(KDDI)

前向きに検討させてもらいます!

地球の約70%を占める海。
漁師たちは、この未知なる海の世界に、
長年の経験と勘で向き合ってきました。


日本人が、安全で美味しい魚を、
これからもずっと食べ続けるために。
漁業と5Gがつながることで、
豊かな海を守ることができるかもしれません。
5Gによって変わる生活は、
すぐそこまで来ています。

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酒井清一郎

酒井清一郎

Seiichiro Sakai

1990年に国際電信電話株式会社(現、KDDI株式会社)に入社。 入社後、研究所にて、交換システム及びモバイルマルチメディアの研究開発に従事。その後、IDOにおけるモバイルインターネット(EZaccess)の立ち上げに参画。3社合併後、KDDIプロダクト統括部長として、au端末の企画開発を担い、G'zOne TYPE-RやInfobar等を商品化。技術関連では、4G移動通信システムの開発、更に、auWi-Fi SPOTの立ち上げ、などに尽力。現在、次世代ネットワーク開発部にて、5Gの実証実験を推進している。

大友康広

大友康広

Yasuhiro Otomo

大友水産株式会社 専務取締役。宮城県の東松島市で三代続く漁師家系で、定置網漁などを営む。魚へのストレスを軽減させるべく、引き揚げ後にすぐに水槽に放す等、重力を感じさせないための工夫を凝らした漁業を展開。2016年には、IoTを駆使して漁の安定化、効率化を図る「スマート漁業」の取り組みをKDDIと開始。センサーやカメラ、通信機能などを搭載した“スマートブイ”を用い、定置網内の魚の量を遠隔で把握できるシステム作りや、これまで漁師の勘に頼っていた、天候による漁獲高の変化のデータ化等を進めている。

上田勝彦

上田勝彦

Katsuhiko Ueda

1964年島根県生まれ。長崎大学水産学部にて魚の研究を目指すが、漁業に傾倒。大学を休学し漁師の世界に。1991年以降は、元漁師という異色の水産庁職員として活躍した。50歳を機に退職し、株式会社ウエカツ水産を設立。「魚伝えて国興す」を社是に掲げ、魚食の復興の為に全国を飛び回り、漁業関係者向けの講習会から魚の料理教室の講師、メディア出演など、幅広く「魚の伝道師」として活動している。

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